住宅購入者の5割が「今が買い時」と回答──焦りで動く前に知っておきたいこと
リクルート調査で住宅購入検討者の50%が「今が買い時」と回答(2020年以降最多)。20代の持ち家率も過去最高に。焦りを感じやすい今だからこそ、冷静に考えるポイントをまとめました。
リクルート(SUUMOリサーチセンター)の最新調査で、住宅購入を検討している人の50%が「今が買い時」と回答したことが明らかになりました。2020年以降で最多の数字です。
最大の理由は「これからは住宅価格が上昇しそう」(50%)という将来への不安でした。同時に、2025年は20代以下の持ち家率が過去最高を記録しています。「買い時」という感覚が広がる中で、焦りを感じやすい状況になっています。
ただし、焦って判断を急ぐことと、良い意思決定をすることは別の話です。この記事では、現在の購入者心理の背景を整理しながら、冷静に考えるためのポイントをまとめます。
「今が買い時」と感じる理由──データで読む購入者心理
「今が買い時」と感じる理由のトップは「住宅価格がさらに上がりそう」で50%を占めます。「いい物件が出ている」(31%)、「住宅ローン金利が安い」(26%)が続きます。
注目すべきは、「いい物件がある」「今が割安」という積極的な理由よりも、「将来もっと高くなる」という不安が一位であることです。つまり、多くの人が「今が良い」から買うのではなく、「先が怖い」から買おうとしているわけです。
また、新築希望の割合は63%で2019年以降最低水準となっており、中古・リノベーションへのシフトも進んでいます。価格の高騰を受けて、選択肢の幅が広がってきた面もあります。
20代の持ち家率が過去最高に──その背景
2025年、世帯主29歳以下(2人以上世帯)の持ち家率が40.7%と過去最高を記録しました(2000年比で約2倍)。首都圏の新築マンション契約者に占める20代の比率も17.3%と前年比1ポイント増加しています。
この背景には複数の要因があります。
賃上げによって20代の年収増加率が30〜50代を上回る傾向が続いており、借入可能額が上がっています。共働きのペアローンが普及したことで、2人分の収入をベースにした借入が一般化しました。また、「将来に売却することを前提にした」投資的な購入という発想も若い世代を中心に広がっています。
一方で、「早く買わないと家を持てなくなる」という恐怖心が購入を後押ししている面も指摘されています。焦りと合理的判断が混在する中で、若い世代が住宅市場に入ってきています。
50年ローン・ペアローンの急増──月々は安くなるが…
返済期間の長期化も急速に進んでいます。変動型金利で50年ローンを提供する金融機関は57.5%に上り、わずか1年で24ポイント増加しました。東京都の20代購入希望者でペアローン×50年超返済を希望する比率は前年比約2倍になっています。
月々の返済額は確かに下がります。1億円を金利1%で借りた場合、35年返済では月約28万円ですが、50年返済では月約21万円と7万円安くなります。
ただし、注意すべき点があります。総利息は大幅に膨らみます。そして、返済当初は毎月の支払いのほとんどが利息に充てられ、元本がほとんど減りません。最初の10年で元本がどれだけ減るかを事前に確認しておくことが重要です。
「焦り購入」のリスク──知っておきたい3つの落とし穴
住宅購入を急ぐことで見落としやすいリスクがあります。
「L字カーブ」リスク
出産・育児の時期に、女性の正規雇用率が低下するパターンをL字カーブと呼びます。夫婦2人の収入をフル活用したペアローンは、妻の減収や育休取得によって返済が一気に苦しくなる可能性があります。子どもを持つ予定がある場合は、1人分の収入でも無理なく返せる水準かどうかを必ず確認してください。
オーバーローンリスク
50年返済では返済当初に元本がほとんど減らないため、減収・離婚・転勤などの事情で売却が必要になった際に、残債が売却価格を上回るオーバーローン状態になりやすくなります。「売れば解決する」という前提が崩れると、選択肢が大幅に狭まります。
マンション価格の息切れ
東京都心6区の中古マンション価格は2026年2月に37カ月ぶりの前月比マイナスとなりました。「値上がりを前提にした売却益」という計算が成り立たないシナリオも十分にあります。将来の売却益をあてにした返済計画は慎重に組む必要があります。
焦らずに考えるための3つの視点
「今の価格で毎月払い続けられるか」を最優先に考える
「将来売れるから」「賃貸より得だから」という理由ではなく、現在のキャッシュフローが本当に成り立つかどうかを起点にしてください。収入の20〜25%以内の月々の返済額が一般的な目安です。
ライフスタイルの変化を複数シナリオで想定する
20代はライフスタイルが大きく変わる時期です。出産・転職・転勤・介護など、複数のシナリオで家計をシミュレーションしておくことが重要です。「最悪のケース」でも破綻しない水準かどうかを確認してください。
間取りと予算を具体化してから動く
漠然と「早く買わなければ」という気持ちで動くと、判断の軸が「焦り」になってしまいます。どんな家に住みたいか、どのくらいの広さが必要か、水まわりや収納の希望は何かを先に整理すると、物件や予算の選択に自分なりの根拠が生まれます。
まとめ
「今が買い時」という感覚を50%の人が共有しているのは事実ですが、その根拠の多くは「将来の値上がりへの不安」です。不安を動機にした意思決定は、後から後悔しやすいパターンでもあります。
建材費や工事費の上昇が続く中で、住宅の総コストが上がっているのは間違いありません。ただし、長期の住宅ローンは家計を何十年にもわたって縛る意思決定です。「焦って動かないこと」は賢明な選択になりえます。
まずは間取りシミュレーションで「自分がどんな家に住みたいか」を具体化することが、冷静な判断の第一歩になります。希望の整理ができると、物件・予算・エリアの絞り込みにも根拠が生まれてきます。